事業年度

株式会社の事業年度(決算期)を変更するには?定款変更手続と実務上の注意点を解説

事業年度変更

株式会社が事業年度を変更する場面は、税務上の最適化や親会社の連結決算への対応など、さまざまな経営上の理由により発生します。
本記事では、株式会社が事業年度を変更する際に必要な定款変更手続や届出、関連実務上の注意点を、司法書士の視点から詳しく解説します。

事業年度とは?会社法上の位置づけ

会社法第435条により、株式会社は各事業年度ごとに計算書類および事業報告等を作成する義務があります。
この「事業年度」は、定款により自由に定めることが可能です(会社法第911条3項14号参照)。

なお、設立時の定款では、事業年度について以下のように定められるのが一般的です。

(事業年度)
第○○条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする。

事業年度を変更できる最長期間は?

事業年度を変更した結果として1期あたりの期間が長期化する場合でも、1事業年度の最長期間は「1年6か月」までと制限されています(会社計算規則第59条第2項)。

例:
旧:毎年1月1日~12月31日
新:毎年4月1日~翌年3月31日
→ この場合、経過措置により最大で「2025年1月1日~2026年3月31日」の15か月が許容される。

手続の流れ:定款変更と届出のポイント

事業年度の変更は、定款の変更を伴うため、株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条、309条2項11号)。

手順の概要

手続内容 実施主体 留意点
株主総会の開催・特別決議 株主総会 定款変更の決議、議案は「定款一部変更の件」
株主総会議事録の作成 代表取締役 登記不要だが、税務署届出等に必要
経過措置の定款附則追加(任意) 株主総会 第◯期のみ例外的な期間とする旨の記載
管轄税務署・都道府県税事務所への届出 会社(代表者) 「異動届出書」の提出が必要


【実務上の注意点】附則の設計と役員任期の扱いに注意

経過措置として附則に記載すべきケース
決算期の変更により特殊な1期(3か月や15か月)が生じる場合、その内容を定款の附則に定めておくと混乱を避けられます。

(経過措置)
第○○条 本定款第○○条にかかわらず、第×期の事業年度は2025年1月1日から2026年3月31日までとする。
本条は、当該事業年度終了後削除されるものとする。

役員の任期との関係に注意

取締役や監査役の任期は、「選任後○年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法336条)とされています。
事業年度の変更により、予定外に任期が短縮される場合があるため、株主総会ではあわせて役員再任の決議を行うのが実務上一般的です。

登記は必要か?

結論から述べると、事業年度の変更は登記事項ではないため、登記申請は不要です。
ただし、事業年度の変更に伴って役員任期が満了し、役員選任の決議を行った場合は、その旨の変更登記が必要になります。

手続きのご依頼・ご相談

事業年度変更時のチェックリストは、以下のとおりです。

・株主総会を開催し、特別決議により定款を変更したか?
・必要に応じて定款附則で経過措置を定めたか?
・役員の任期への影響を確認し、再任決議を忘れていないか?
・税務署・自治体等に異動届を提出したか?

株式会社の事業年度変更は、単なる定款の文言修正ではなく、税務・登記・ガバナンスに波及する影響を正確に把握したうえで対応すべき重要手続です。
実務においては、司法書士・税理士等の専門家に相談しながら慎重に進めることをおすすめします。

会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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