株主提案権とは?議題と議案の違い、行使の要件を実務的に解説
株主提案権と議題・議案の違い
株主は会社の重要な意思決定に関与できる権利を有しています。その中でも、株主総会に議題や議案を提案することができる「株主提案権」は、少数株主にとっても重要な権限の一つです。本コラムでは、株主提案権の基礎から、行使にあたっての要件、そして取締役会の有無や公開会社かどうかによって異なる扱いについて、実務に即して解説します。
株主提案権とは?
株主提案権とは、株主が取締役に対し、株主総会の目的事項として一定の議題または議案を提案できる権利です(会社法303条)。
株主提案権の2つの類型
・議題提案権:新たな議題(例:取締役選任の件)を株主総会の目的事項とする請求権
・議案提出権:既存または提案された議題について、具体的な議案(例:○○氏を取締役に選任する)を提出する権利
「議題」と「議案」の違い
用語 | 内容 | 例 |
---|---|---|
議題 | 株主総会で議論する目的項目 | 「取締役選任の件」 |
議案 | 議題を具体化した提案内容 | 「○○氏を取締役に選任する件」 |
※議題がなければ議案は成立しません。
議題提案権の行使要件
取締役会設置会社
要件
・総株主の議決権の100分の1以上 または 300個以上の議決権を保有
・6か月以上継続保有(公開会社のみ)
手続:株主総会日の 8週間前までに請求
非設置会社
要件:1単元以上の株式を保有する株主
手続:同様に8週間前までに請求
保有期間要件の違い
会社形態 | 保有期間要件 |
公開会社(取締役会設置) | 6か月以上継続保有が必要 |
非公開会社 | 保有期間の要件なし |
※株式の流通性による濫用防止措置として設けられています。
議案提出権の行使
事前に議案を提出する場合
対象:株主総会の目的事項に関する議案
要件:議決権100分の1以上 or 300個以上かつ6か月以上継続保有(取締役会設置会社)
手続:株主総会の 8週間前までに要領を通知請求
当日に議案を提出する場合(会社法304条)
内容:会社が提示する議題に対する修正案や反対案を提出可能
提出できないケース(会社法304条但書)
・法令や定款に違反する議案
・過去3年以内に実質同一議案が提案され、株主の10分の1以上の賛成を得られなかった場合
実務上のポイントまとめ
区分 | 公開会社(取締役会あり) | 非公開会社(取締役会あり) | 非設置会社 |
持株要件 | 1%以上 or 300個以上 | 同左 | なし |
保有期間要件 | 6か月以上 | 不要 | 不要 |
提案期限 | 8週間前まで | 8週間前まで | 8週間前まで |
手続きのご依頼・ご相談
株主提案権は、会社経営への参加を可能とする重要な手段です。しかし、その行使には会社形態や株式の保有状況によって異なる要件が定められており、適切な手続きを踏まなければ無効とされるおそれもあります。
株主提案をご検討中の方や、招集通知の準備に関わる方は、専門家への相談をオススメします。
会社・法人登記に関するご相談は、司法書士法人永田町事務所までお気軽にお問い合わせください。