株主総会招集通知に添付する監査報告って?内容・形式・押印の必要性を解説
なぜ監査報告が招集通知に添付されるのか?
会社法第437条に基づき、取締役会設置会社が定時株主総会を開催する際には、計算書類や事業報告とともに、監査報告書(または会計監査報告)を株主に提供する義務があります。
この「提供」の方法として実務上一般的なのが、株主総会の招集通知に監査報告書を添付する形です。しかし、この監査報告については、
・コピーでいいの?
・押印は必要?
・自署してもらうべき?
など、細かい点で悩む実務担当者も多いのが実情です。
本コラムでは、非上場会社の実務を中心に、招集通知に添付する監査報告の「あるべき姿」を整理します。
法的根拠、会社法437条の読み解き
まず、会社法第437条を確認しておきましょう。
会社法第437条第1項(取締役会設置会社)
取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第1項又は第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
この条文から分かるとおり、「監査報告」自体を株主に提供する義務があるという点がポイントです。つまり、内容が明らかにされていれば形式は問わないと解釈されます。
「謄本」である必要はない?形式面の変遷と現在の実務
旧商法時代は、「監査報告書の謄本を交付すべし」と明記されていました(旧商法第283条第2項)。
そのため、原本をコピーしたもの(氏名の自署+押印入り)を添付する運用が一般的でした。
しかし、現在の会社法では「謄本」という文言は削除され、監査報告の内容が明らかになる体裁であれば足りるとされています。
【現在の一般的な実務例】
項目 | 内容 |
---|---|
監査報告の様式 | ワードやPDFで作成したものを印刷 |
監査役氏名 | タイプ打ちでも可(ただし誰の報告か判明する必要あり) |
押印 | 原則不要。ただし商慣習上、押印されることも多い |
形式名 | 「監査報告書」※「謄本」とは記載しないのが一般的 |
どこまでが「添付すべき監査報告」とされるか?
監査役が作成・提出した監査報告書の「内容」が株主に伝わればよく、原本の写しである必要はないというのが実務上の通説です。
したがって、
・自署や押印がないことを理由に無効とはされない
・監査報告の記載内容(監査対象期間・監査意見など)が整っていればよい
とされます。
とはいえ、以下の要素は確実に記載しておくことが推奨されます。
【監査報告書の記載要素】
・会社名
・監査対象期間(例:第○期 令和○年○月○日~)
・監査意見(例:適正と認めます)
・監査役の氏名
・作成年月日
実務上の注意点とよくある誤解
(1)議事録と一緒にホチキスで綴る?
→ 議事録の別紙とすること自体は構いませんが、原本ではなく写しを綴るのが通常です。原本管理は内部規程等に従って慎重に行うべきです。
(2)監査役の交代時期と整合性が取れていない
→ 監査報告書の日付や署名者と、実際の就任・退任時期が矛盾していないかを確認しましょう。
(3)監査役会の会社で複数名いる場合は?
→ 監査役全員の氏名を記載し、個別に意見が異なる場合はそれぞれ記載する必要があります。
重要なのは「内容が伝わる」こと
監査報告書の添付において重要なのは、株主に対して適切な監査が実施されたことがわかることです。
形式よりも内容の正確性と明確性が重視されます。
上場企業であれば厳密なフォーマット管理が求められますが、非上場企業では柔軟な対応が可能です。
とはいえ、株主との信頼関係や株主総会の正当性確保の観点から、丁寧で分かりやすい監査報告の提供が望まれます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、株主総会招集通知に添付する監査報告の内容・形式・押印の必要性を解説しました。
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