取締役会

定時株主総会終了後の取締役会は誰が招集する?改選直後の取締役会招集に関する法的整理と実務対応

株主総会直後の“空白期間”とは?

株式会社では、定時株主総会において取締役の任期満了に伴う改選(再任・新任・退任)が行われることが一般的です。
そして、その総会の直後に開催される最初の取締役会では、代表取締役の選定や重要事項の決議を行うことが通例ですが、ここでしばしば次のような疑問が生じます。

「取締役が改選された直後の取締役会は、誰が招集できるのか?」

代表取締役が“空位”となる理由

総会で取締役が改選された場合、旧取締役は任期満了により退任し、代表取締役の地位も同時に失われます。
つまり、株主総会が閉会した直後から、新たに代表取締役が選任されるまでの間、会社には代表取締役が存在しない状態となるのです。

この「代表取締役空位の時間帯」に開催される取締役会をどう招集するかは、実務上の重要な論点です。

原則確認:取締役会の招集権者

会社法上、取締役会の招集者について明文の規定はありませんが、多くの定款では次のように定められています。

「取締役会は、代表取締役がこれを招集する。」

この定款規定に基づけば、代表取締役が不在の状態では、誰が取締役会を招集できるのかが明確でなくなるおそれがあります。
実務的な解決策:会社法の柔軟性を活かす

実は会社法の解釈上、代表取締役が存在しない場合でも、各取締役は取締役会を招集する権限を有するとされています(会社法施行規則・実務指針等に基づく解釈)。
このため、以下のいずれかの方法で招集可能です。

方法①:各取締役が個別に招集する

会社法上、取締役は「取締役全員の同意」があれば、招集手続を省略して取締役会を開催することができます(会社法第370条の類推適用)。
→ただし、欠席予定の取締役の事前同意書がない場合、省略要件を満たせないことになります。

方法②:選任予定者から「事前同意」を取得しておく

実務では、株主総会開催前に以下の書面を用意することで対応する例が多く見られます。
・就任承諾書(新任取締役)
・定時株主総会終了直後に開催される取締役会への出席及び招集手続省略への同意書

これにより、「総会終了と同時に就任し、同時に取締役会の開催に同意した」という状態を整え、招集省略が可能になります。

代表取締役の名で「招集通知」を出してよいのか?

改選前の代表取締役が、総会終了後に開催される取締役会の招集通知を事前に送付するケースがあります。
この場合、通知の発信時点では代表取締役であるため、形式上は問題ないとの見解もありますが、以下の注意点があります。

・通知はあくまで「就任予定者宛」に発している(=選任されなければ無効)
・招集者の資格が会議時点で消滅していることに対する整合的処理が必要

よりリスクを抑えるためには、「招集手続省略の同意取得」との併用が望ましいです。

定款・規程の整備も実務上有効

このような招集問題に備え、定款や取締役会規程で明確に定めておくことが有効です。

例)
「定時株主総会終結後、改選後の取締役によって招集される最初の取締役会については、あらかじめ全員の同意を得ていれば、招集手続を省略して開催することができる。」

また、新任取締役に対し、選任予定者としての出席義務と招集手続の省略同意を事前に通知することも重要です。

形式的瑕疵を防ぐための準備を怠らない

定時株主総会直後の取締役会は、代表取締役の選定をはじめ、会社運営にとって極めて重要な意思決定の場です。
一方で、法的空白が生じやすい場面であるため、事前準備の有無が登記実務・会議体運営の適法性に大きく影響します。

以下の2点を押さえておくと、スムーズな運営が可能です。
・就任承諾と招集同意書は事前に取得しておく
・定款・規程で特別な手続きを明示しておく

手続きのご依頼・ご相談

本日は、改選直後の取締役会招集に関する法的整理と実務対応について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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