「検索用情報の申出」とは?所有権登記で義務化された新制度を司法書士が解説
制度改正の背景
2025年4月21日より、不動産の「所有権に関する登記」(保存・移転・更正等)を申請する際、申請人(登記名義人)に関する「検索用情報」の提出が義務化されました。
これは、不動産登記簿上の情報と市区町村が保有する住民基本台帳情報等とを照合しやすくすることで、登記官が将来的に住所変更等を職権で反映できるようにするための制度的整備です。
従来の登記申請では、住民票等の添付書類に基づき登記名義人の特定を行っていましたが、その情報は法務局のデータベースとして蓄積されていませんでした。本制度の導入により、司法書士が提出する「検索用情報」が登記官の内部処理に直接関与する時代に突入したといえます。
「検索用情報」とは何か?
提出が求められる情報は以下の5項目です(不動産登記規則158条の39第1項)。
区分 | 内容 |
---|---|
氏名 | 登記申請人(登記名義人)本人の氏名 |
氏名の読み仮名 | 住民票記載のふりがな(外国籍の場合はローマ字) |
住所 | 登記上の住所と一致する必要あり |
生年月日 | 西暦での年月日 |
メールアドレス | 任意項目(詳細は後述) |
留意点
読み仮名の相違や未記載は、補正対象となる可能性があります。
外国籍の方は、居住国・ローマ字氏名の有無等により提出形式が異なります。
義務の範囲と対象登記
義務のある登記(2025年4月21日以降)
登記類型 | 義務の有無 | 備考 |
---|---|---|
所有権保存登記 | 義務あり | 新築建物の最初の所有者による登記 |
所有権移転登記 | 義務あり | 売買・贈与・相続等 |
所有権更正登記 | 条件付き | 更正によって登記名義人となる者がある場合 |
合体登記に伴う保存等 | 条件付き | 不動産登記法49条1項後段による併合申請 |
義務のないケース
ケース | 理由 |
---|---|
法人が登記名義人 | 法人に検索用情報提出義務は課されていない |
登記名義人が海外居住 | 照合対象とならないため |
登記申請人が代位者 | 所有権者本人でないため |
「メールアドレス」は提出すべきか?【実務視点での考察】
任意項目ではあるが慎重な対応が必要
メールアドレスの提出は義務ではありません。しかし、提出した場合には以下のようなリスクも発生します。
リスク項目 | 内容 |
---|---|
不達リスク | メール受信設定や記載誤りによる未達で、登記補正の対象となることも |
長期管理リスク | 数十年後に法務局から連絡が来ても気付かない、メール廃止等の懸念 |
セキュリティリスク | 登記関連通知を装ったフィッシングメールの温床になる可能性 |
管理義務の発生 | アドレス変更時の届出義務が発生し、実質的なメンテナンスコストが上昇 |
実務上の対応手続き
所有権登記と同時に提出する場合(義務)
・「検索用情報申出フォーム」を依頼者に事前送付
・司法書士が申出情報をオンライン申請情報に反映
・別途費用は発生しないことが多い
所有権登記済の方が後日申出する場合(任意)
・単独申出として司法書士が法務局へ別途提出
・司法書士報酬+登記情報取得実費等
住所変更登記義務化(2026年4月1日~)
本制度は、2026年4月から開始される「住所等の変更登記義務化」や「登記官による職権登記制度」の前提となる重要なインフラ要素です。
検索用情報の登録がないと、職権登記の対象外となり、義務違反のリスクが生じます
よって、検索用情報の正確な登録とメンテナンスは、不動産所有者にとって中長期的に不可欠な管理事項となるでしょう。
まとめ:検索用情報制度は何を変えるのか?
検索用情報の提出制度は、単なる技術的な入力項目の追加ではありません。
不動産登記を「動的に管理する制度」への転換点といえるものです。
司法書士としては、今後の住所等変更登記義務化・職権登記制度との連動も見据え、依頼者への丁寧な説明と確実な手続実施が求められます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、「検索用情報の申出」とは?所有権登記で義務化された新制度を解説しました。
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