登記に使える議事録とは?職務執行者の選任に関する議事録の記載例と“受理されない書類”の違い
職務執行者選任に関する議事録
合同会社の設立登記において、業務執行社員が法人である場合は、その法人が職務執行者を選任したことを証する書面(例:取締役会議事録、社員総会議事録など)を添付する必要があります(商業登記法施行規則61条1項)。
しかし、登記が不受理になるケースの多くは、この議事録の記載内容に原因があります。
本稿では、職務執行者選任に関する議事録の記載例とNG例を比較しながら、登記官の審査視点と実務の落とし穴を解説します。
基本原則「職務執行者を選任する」と明示すること
職務執行者の選任議事録では、以下の要素が必要です。
要素 | 解説 |
---|---|
法人名 | 職務執行者を選任する業務執行社員たる法人の名称 |
決議機関 | 取締役会 or 社員総会など、選任を決定した社内機関 |
決議日 | 明確な日付(定款作成日と不自然に乖離していないか確認) |
議決内容 | **「○○氏を職務執行者に選任する」**という明確な文言 |
【記載例】登記実務で受理された議事録(要旨)
記
当社が設立する予定の「●●合同会社」において、当社を業務執行社員とする場合には、以下の者を職務執行者として選任することを決議する。
氏名:永田町太郎
生年月日:平成◯年◯月◯日
住所:東京都千代田区永田町一丁目11番28号
以上
このように、「どの合同会社に対する」「誰を」「何として」選任するかを明示する必要があります。
【NG例】登記不受理となった事例に共通する記載不備
不備パターン | 登記官の判断 |
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「子会社設立を決議」とあるが、職務執行者選任の文言がない | 選任意思の明示がないとして補正指示または却下 |
「事業概要資料に職務執行者氏名が記載」されているが本文に記載なし | 補助資料にすぎず、正式な決議とは見なされない可能性 |
決議日が定款作成日の2か月以上前 | 乖離が大きく、効力に疑義ありとして要再提出とされることも |
決議者の署名・記名押印がない | 書類の形式不備として補正の対象にされる |
実務対応のポイント
対応項目 | 解説 |
---|---|
決議本文に必ず「選任する」旨を明記する | 曖昧な表現や資料記載では登記官を説得できない |
対象となる合同会社の名称を明示する | 「どの会社に対しての選任か」が登記官に伝わらなければNG |
決議日と定款作成日の時期を合わせる | **設立日よりも前でかつ合理的な範囲(数日〜1週間)**が無難 |
議事録の署名者・会社印の押印を確実に行う | 原本証明も含め、法務局提出書類としての形式を満たすこと |
まとめ:登記官は「選任の明示」と「書面の整合性」を見ている
・議事録には選任行為が明確に記載されている必要がある
・添付資料や参考資料だけでは選任の意思が読み取れないとされ、補正の対象に
・記載内容と形式が適正であれば、定款作成前後の選任でも受理された実例は多い
ただし、あくまで主観的判断を伴うため、慎重に文案を設計すべき
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本日は、登記に使える議事録とは?職務執行者の選任に関する議事録の記載例と“受理されない書類”の違いについて解説しました。
次回【第5弾】では、「そもそも職務執行者という制度は合理的なのか?今後の法改正への論点」
という応用的な視点から、制度の課題や将来的な方向性を考察します。
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