遺贈を受けたときの相続税、手続きと税額の考え方
遺贈と相続税
遺言によって財産を受け取る「遺贈」。その受け取りには感謝の気持ちとともに、思わぬ税金の負担が発生する場合もあります。特に遺贈を受けた人が法定相続人でない場合には、通常よりも高い税率が適用されるなど、注意すべき点が多く存在します。
本記事では、遺贈による財産取得と相続税の仕組みについて、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
遺贈と相続の違いとは?
まず、「遺贈」とは、被相続人の遺言により特定の人に財産を譲ることを言います。
これに対し「相続」は、法律上の相続人(配偶者や子など)が相続順位に従って自動的に権利を引き継ぐものです。
遺贈には次の2種類があります。
1.包括遺贈:遺産の全部または割合で与える(例:遺産の50%をAに)
2.特定遺贈:特定の財産を指定して与える(例:自宅の土地をBに)
このうち、包括遺贈は相続と同様の扱いを受けますが、特定遺贈の場合は登記や税金の負担が異なることがあります。
相続税はどう決まる?基本のステップ
相続税の計算は大きく以下の流れで進みます。
1.遺産の総額を評価する
2.基礎控除を適用する
3.各人の取得分に応じて相続税を計算する
4.必要に応じて加算・減額を行う
ここでは、特に遺贈を受けたケースで気を付けるべきポイントを詳しく解説します。
法定相続人以外の人が遺贈を受けると「2割加算」
相続税法では、法定相続人以外の者(例:甥姪、内縁の配偶者、第三者)が財産を受け取った場合、計算された相続税額に20%が加算されます。これを「2割加算」と言います。
たとえば、ある人が遺贈で1,000万円の財産を受け取り、通常なら相続税が100万円だったとすると、加算後は120万円になります。
非課税枠が使えない財産もある
死亡退職金や生命保険金などには、相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。しかし、これはあくまで法定相続人に限った特例であり、遺贈によってこれらを受け取った人(たとえば友人や孫など)は、この非課税枠を使えません。
遺贈によって保険金などを渡す場合には、受取人が法定相続人かどうかに注意しましょう。
登録免許税や不動産取得税にも注意
不動産を遺贈で取得する場合、相続登記に伴って発生する登録免許税や、場合によっては不動産取得税の負担が発生します。
・相続による不動産取得:登録免許税は評価額の0.4%
・遺贈(特定遺贈)の場合:登録免許税は評価額の2.0%
・不動産取得税:包括遺贈や法定相続人への遺贈は原則非課税だが、それ以外は課税対象となる可能性あり(評価額×4%)
遺贈は相続人以外に不動産を残す手段として有効ですが、税金の違いを把握したうえで判断することが重要です。
遺贈で相続税が払えないときは?
高額な財産を遺贈で受け取った場合、現金が手元にないと納税資金に困ることもあります。そんなときには、以下のような制度を検討しましょう。
・延納:分割払い。最長20年まで可能。
・物納:現物で納税。不動産や株式などを使うことができるが、条件が厳しい。
・財産の売却:受け取った不動産や株式を売却して納税資金を捻出。
ただし、物納はあらかじめ申請し、認められる必要があります。計画的に準備を進めましょう。
手続きのご依頼・ご相談
遺贈と税金はセットで考えるべきといえます。
遺贈は、想いを形にする尊い手段ですが、その一方で、通常の相続よりも税金の面で負担が大きくなる可能性があります。
・2割加算や非課税枠の対象外となるケース
・不動産に関わる登録免許税・不動産取得税の発生
・納税資金の確保が必要
など、注意すべき点が多くあります。
専門家へ相談し、税負担や登記手続きも見据えた遺言書の作成をすることをおすすめします。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。