合併

会社法施行規則第86条:合併契約承認議案作成の重要性とポイント

合併契約等の承認議案

会社合併といった組織再編の手続きでは、原則株主総会での「合併契約等の承認議案」が欠かせません。
この議案を適切に作成するための指針として、会社法施行規則第86条が定められています。
本コラムでは、この条文が求める内容とその背景、さらに実務上の重要なポイントを深掘りし、株主総会を円滑に進めるための具体策をご紹介します。

会社法施行規則第86条とは?

会社法施行規則第86条は、株主総会での合併契約の承認議案に記載すべき事項を定めた規定です。
この条文の目的は、株主に正確かつ十分な情報を提供し、合理的な意思決定を可能にすることです。

会社法施行規則
(吸収合併の承認に関する議案)
第86条
取締役が吸収合併契約の承認に関する議案を提出する場合には、株主総会参考書類には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
①当該吸収合併を行う理由
②吸収合併契約の内容の概要
③当該株式会社が吸収合併消滅株式会社である場合において、法第298条第1項の決定をした日における第182条第1項各号(第5号及び第6号を除く。)に掲げる事項があるときは、当該事項の内容の概要
④当該株式会社が吸収合併存続株式会社である場合において、法第298条第1項の決定をした日における第191条各号(第6号及び第7号を除く。)に掲げる事項があるときは、当該事項の内容の概要


条文が求める記載事項

・合併契約等の内容
合併における契約条件やその詳細。
・効力発生日
合併が法的に効力を生じる日。
・対価の内容
合併によって株主に交付される株式、金銭、その他の財産の詳細。
・その他の重要事項
株主や債権者の判断に影響を与える重要な情報。

これらを網羅することで、株主が議案を正しく理解し、適切な判断を下せる状態を確保します。

留意すべきポイント

(1) 合併契約の詳細を的確に記載する

複雑な条件が含まれる合併契約は、これを正確に議案に反映させる必要があります。特に、株主に交付される対価の種類や計算方法については、具体的かつわかりやすく記載することが重要です。

(2) 事前確認の徹底

株主総会での議案提出前に、取締役会や法務部門、場合によっては外部専門家のレビューを受け、記載事項に漏れや誤りがないことを確認することが不可欠です。

(3) 利害関係者への配慮

議案作成時には、株主視点での分かりやすさを意識することはもちろんのこと、株主以外の利害関係者に与える影響も考慮し、必要に応じて説明責任を果たせる準備をしておきましょう。これにより、株主総会後の混乱を防ぐことができます。

実務における応用事例

応用例1:合併契約に基づく対価の透明性確保

ある企業が吸収合併を進めた際、交付される株式の交換比率について具体的な計算根拠を議案に記載した結果、株主からの理解が得られ、スムーズに総会決議が可決されたケースがあります。このように、透明性を意識した記載がトラブル防止につながります。

応用例2:債権者の信頼確保

合併後の財務状況に不安を抱いた債権者に対し、議案に財務シミュレーションを追加した事例があります。この対応により、債権者の懸念を払拭し、手続きが円滑に進みました。

手続きのご依頼・ご相談

会社法施行規則第86条は、合併契約承認議案の作成における基本指針として、透明性と適切性を確保する役割を担っています。
この条文を遵守することで、株主総会がスムーズに進み、企業の組織再編が成功する可能性が高まります。
特に、合併手続きが複雑化する会社環境では、法的要件を満たすだけでなく、株主や利害関係者との信頼関係を築くことが重要です。
企業は、議案作成を単なる手続きとしてではなく、株主とのコミュニケーションの一環と捉え、慎重かつ丁寧に進めるべきです。

本日は合併契約承認議案作成の重要性とポイントについて解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

債務整理・商業登記全般・組織再編・ファンド組成などの業務等を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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