一般社団法人の基金制度について募集手続きから返還手続きまでわかりやすく解説
一般社団法人の基金制度
剰余金の分配を目的としない非営利法人の1つである一般社団法人は、基金制度を活用して、活動資金を調達することができます。
この基金によって拠出された財産は寄付金ではないので、一定の時期に返還する義務を負います。
つまり、株式会社における資本金のように、完全に法人の資産になるわけではないことに注意が必要です。
このコラムでは、一般社団法人の基金制度についてわかりやすく解説していきます。
一般社団法人の基金制度とは
一般社団法人における「基金」とは、企業や団体、個人などから拠出された当該法人の活動資金のことです。
営利法人である株式会社の場合、株主からの出資を元手に事業活動を行い、その活動で得た利益を配当として分配することになるでしょう。
一方、非営利法人である一般社団法人の場合、そもそも出資や利益の分配という概念がないため、株式会社と同じようには資金調達ができません。
したがって、一般社団法人では、資金調達の手段として基金制度が利用されることになります。
なお、基金に関する事項は登記事項には当たらないため、基金の募集について定款の定めを変更しても、変更登記の必要はないことを覚えておきましょう。
基金募集手続きの流れ
基金募集手続きの大まかな流れは、次のとおりです。
なお、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律は「法」と表記します。
募集事項等の通知(法133条第1項、法施行規則52条)
基金の引受けの申込み(法133条第2項)
基金の割当て(法134条第1項)
基金の割当ての通知(法134条第2項)
基金の拠出の履行(法138条)
なお、総額引受契約(法135条)を締結する場合には、申込みから割当て通知までの手続きは不要となります(法135条)。
基金返還手続き
一般社団法人は基金の拠出者に対して、当事者間の合意に基づいた返還義務を負います。
返還期日は「基金拠出者と合意した期日までは返還しない」、「解散時まで返還しない」などと定款に規定する場合が多く、その返還時期は法人により様々です。
この返還債権については利息を付すことができず(法143条)、基金については、貸借対照表における純資産の部に計上されます。
基金返還手続きを行うには、定時社員総会の普通決議が必要となります(法141条1項)。
第141条
1 基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければならない。
2 一般社団法人は、ある事業年度に係る貸借対照表上の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合においては、当該事業年度の次の事業年度に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、当該超過額を返還の総額の限度として基金の返還をすることができる。
① 基金(第百四十四条第一項の代替基金を含む。)の総額
② 法務省令で定めるところにより資産につき時価を基準として評価を行っている場合において、その時価の総額がその取得価額の総額を超えるときは、時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額
なお、基金を返還をする場合には、返還をする基金に相当する金額を代替基金として計上する必要があります(法144条)。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、一般社団法人の基金制度について解説いたしました。
株式による資金調達ができない一般社団法人では、基金制度を活用することで活動資金を募ることができます。
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